結婚白書Ⅰ 【違反切符】


「へぇ そうなんだ やっぱり和音は誰とでも上手くつきあえるね」


「上手つきあおうとしたんじゃないの

朋ちゃんとは  初めて会った気がしないの 前から知ってたような・・・」


「でも嬉しいよ 妹をそんな風に思ってもらえて安心した」



私だって嬉しい 妹が出来たんだから



「水族館のジンベイザメ 大きくなりすぎて海に帰したんですって」


「そうなんだ じゃあメインの魚がいなくなったんだ」


「それが また他のサメを捕獲して連れてきたって ニュースで聞いたけど」


「へぇ そうか・・・明日の夜行ってみようか!」







夜の道を 行く当てもなく車を走らせる

一緒にいられるのが嬉しかった

離れてる時間が長いだけに 同じ空間にいる それだけでよかった

毎日話をしてるのに どれだけ話してもつきることはない


一月に一度しか会えない私達は 一緒にいるときは互いにどこかに触れていた

手を繋いだり 腕を組んだり

彼が私の背中に手を回して きゅっと抱かれるのも心地よい 

時々 思い出したように合わされる唇もそう・・・

会えない時間の穴埋めをするように 触れることで お互いの存在を確かめる



「結納なんて めんどくさいと思ってたけど おばさん達の顔もあるしね 

これもケジメなんだろうね」



私も結納なんてと思っていたけれど 準備をすすめるうちに気持ちが

変化してきた

婚約が 形となって現れるのが結納だから



「明日かぁ 緊張するんだろうなぁ やっぱり気が重くなってきたよ」


「大丈夫よ お仲人さんが 全部仕切ってくださるそうだから」


「ふぅー そうだね じゃあそのあと 水族館に行って気分転換しよう」



今日最後の口づけは 別れを惜しむようにかわされる

その余韻は いつまでも私の中に響いていた 





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