やわらかな夜
「何の用だ」

毒づくように言った俺に、
「荒れてるなあって思って」

彼女はフフッと笑った。

――こいつ、俺に嫌みでも言いにきたのか?

嫌みを言いにきたなら帰ってくれと言うために口を開こうとしたら、
「寂しいんでしょ?」

彼女がそんなことを言った。

言われた俺は意味がわからなかった。

「人恋しいから、お酒で寂しさをまぎらわせているんでしょ?」

そう言った彼女に、
「――何が言いたい…」

俺は呆れたと言うように息を吐いた。

彼女は考えるように口を閉じた後、
「あたしを抱いてもいいよ?」
と、唇を動かした。
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