やわらかな夜
そう言った彼女に、俺はすぐに言葉が出てこなかった。

――こいつ、まさかとは思うけど金目当てか?

俺の頭の中を読んだと言うように、
「ヤだ、そんなんじゃないわよ」

彼女はやれやれと言うように息を吐いた。

「あたしをそこら辺にいる女の子たちと一緒にしないで欲しいんだけど。

って言うか、おにーさんからして見たら23歳は子供なの?」

彼女が言った。

23歳って、俺よりも4つ下じゃねーか。

その年齢のわりには、彼女はとても幼く見えた。

てっきり、19とか20くらいだと思ってたのに…。

「――だったら…」

「あたし、おにーさんにいい夢を見せる自信があるよ?」

俺の言葉をさえぎるように、彼女はフフンと得意げに笑った。

「まあ、どうするかはおにーさん次第……って、わっ!?」

気がつけば、俺は彼女の腕をひいて店を出ていた。
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