オルガンの女神

四方を塀で囲んだそこは、元はディリカ・ブロッケル氏の屋敷だった。

それを建築家が設計し、内装を見事に展示室へと変えたのだ。

彫刻や絵画を中心に、貯蔵された美術品の数は実に数万。

“パームの金貨"とは、その内の一つなのだろうか…───?


「なあ、パームの金貨ってのは“うち"を雇う程、価値のある物あのか」

「さあ。聞いた事もねえ」


塀の外側を巡回するWALTZ(ワルツ)の兵隊。

派遣型軍事組織WALTZ(ワルツ)とは、政府から独立した軍事組織。

各地に支部を置き、所属する兵、所有する武器は大国に匹敵する。

主な収益は、顧客の護衛、武器製造、依頼さえあれば国同士の争いにすら加担する。

“傭兵部隊"。
そう呼ぶ者もいる程、WALTZ(ワルツ)の活動に制限はない。


「ひょっとして、とんでもない物だったりしてな」

「教えてやろうか?」


突如、背後から聞こえた声に、WALTZ(ワルツ)の兵隊は銃を構えた。

そこにいたのは赤髪の男とスキンヘッドの男。


「何者だ…!」

「おいおい、一般市民に銃口を向けるのか?」

「残念だったな。一般市民なら、騒ぎが静まるまでの間、ここ一帯が禁止区域に指定されてる事を知ってるはずだ…!」

「好奇心旺盛なのかも」


その瞬間、辺り一帯の景色が消え“真っ白い"空間に包まれた。

あまりに突然な事に、WALTZ(ワルツ)の兵隊達は動揺を隠せずに、銃口が右往左往している。

その様子とは裏腹に、二人の訪問者は余裕の態度。


「くっくっく」

「な、な、何をした…!ここはどこだ…!と、閉じ込められたのか…?」

「ただしくは“隔離"だ。空間の“隔離"」

「く、空間の“隔離"…?」

「ご理解頂けたかな?これがあんたらが相手にする“力"だ」


赤髪の男はそう言って、胸元から一枚の金貨を見せる。

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