結婚白書Ⅱ 【恋する理由】


「工藤君 聞きたいことがあるの 真面目に答えてね」



呼吸を整えて 一気に聞いた



「私のどこが良くて付き合ってくれてるの?

アナタね ”素敵だよ 好きだよ”って 簡単に口にしすぎる

この前のキスはなに?あれはお遊び?

私だって今までいろんな思いをしてきたの

結婚したいと思った人だっていたわ

でもね 人の気持ちって そんなに簡単じゃないの

わかりあえたと思っても なかなか上手くいかない

アナタの言葉を聞いてると どれが本当なんだか信じられないのよ

私 別れた彼女の替わりなの?」



私の勢いに驚いたのか 顔がこわばっている

やがて 深いため息をつくと

”ちょっと待って” そう言って 路肩に車を止めた




「俺 そんな単純な気持ちじゃないよ

キスだって そうしたいと思ったから・・・理由なんてないよ

円華さんがそんな風に思ってたなんてショックだな」



ハンドルに顔を乗せ 苦痛の表情

いつもの飄々とした風貌は消え去っていた



「だって 私 アナタより8歳も年上なのよ

好きだって言われて ”はいそうですか”って言えるわけないじゃない・・・」



反論してみたが さっきの勢いはなくなった

声がだんだん小さくなってきた

なんだか私の方が悪いことをしたみたい



「年の差って そんなに気になるの? 俺は気にしないけど・・・

わかった ちゃんと話すから」




”タバコ 吸ってもいいかな?” 彼はそう聞いてから火をつけた

胸の奥深く煙を吸い込むのがわかる

気持ちの整理をしているのか 黙って吸っていたが

タバコを半分以上残して 吸い殻入れに押し込んだ




そして 彼から聞いた話は 予想以上に 私を動揺させた




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