結婚白書Ⅱ 【恋する理由】


そのあと・・・



「君は イケる口か?」



父の強引な誘いに 要は酒の相手をさせられた


先ほどまでの仏頂面は姿を消し 酒が入るほどに滑らかになる父の口は

私のことばかりだった



「円華はなぁ 俺の体を気遣って 酒を控えろ タバコをやめろとうるさい

だがなぁ それは嬉しいもんだぞ お前も娘ができたらわかる 

わかるよ・・・」


「はぁ そうですね」



要は 父を刺激しないように 差しさわりのない相槌を打ちながら 

上手く酒の相手を務めていた



「アンタ なかなか話のわかるヤツじゃないか これなら安心だ

円華 良かった 良かった・・・」



だんだんロレツのまわらなくなった父を 母が介抱する



「工藤さん 今夜はありがとう 主人ね 寂しくてしょうがないの 

これからも たまには付き合ってね」



要が 優しい笑みを母に返す





「お父さん 本当に寂しそうだったな お母さんが言ってたよ 

娘を持つ父親の試練だからって」



帰りながら 要がポツポツと話す



「うん そうだね」



娘を持つ父親の試練か

ちょっぴり父が可哀想になってきた



「俺 お父さんの気持ちわかるよ もし 俺に娘がいたら

絶対反対するだろうな」



なによ まだ結婚もしないのに 娘の心配なの?

まじめくさった顔の要が 妙に頼もしく思えた




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