恋物語
「あーっくそっ」
俺は再び琢磨の襟首を掴み、部室から退室した。
部室の影に隠れ、琢磨を解放する。
「いい加減元の世界に戻ってこいっ」
もう一発殴る。
こうでもしないと戻ってこないだろう。
案の定、琢磨は顔を上げ、情けない顔を俺にさらした。
うわ、泣く一歩手手前じゃねぇか、これ。
「……どうしよぅ……嫌われた……雅樹ぃ…」
いや名前を呼ばれても。
「だが、事実だな」
「……ぅ」
「なよなよしてるだろ、実際」
こいつは男にしてはかなりおとなしめな性格で、優柔不断で……完璧草食系男子の模範生だ。
望月の表現はあながち間違いではない。
「…ぅぅ……雅樹はいいよね……」
「あ?」
「頭だって、名前、聞いてたでしょ。どさくさに紛れて…小野崎さんに」
聞いてたのか。
「頭撫でてたし……」
見てたのか。
「最後名前、呼んで……会話してたし……」
…………。
こいつ、会話すらできなかったからな。望月と。