ビロードの口づけ 獣の森編


 目を閉じてクスクス笑いながら、しばし獣を抱きしめる。
 ふと、手の平や素肌に触れる毛並みの感触が消えている事に気付き、クルミは目を開いた。

 ジンが優しい笑みを湛えて見下ろしていた。
 クルミはジンの首に両腕を回す。

 自然に顔が近づいて唇が重なった。
 静かに甘く緩やかに、優しいキスがクルミの胸の内を幸せで満たしていく。

 少しして唇を離したジンは、クルミの髪をひと撫でした。


「明日、執務室に来い。具体的な話を詰めよう」


 もう一度唇に軽く口づけて、ジンは獣姿に戻った。
 グルグルとのどを鳴らしながら夜具の中に潜っていく。
 奥で反転して戻ってきた獣は、クルミの横に背中を向けて身体を伸ばしたまま寝そべった。
 クルミは獣に寄り添って背中から抱きしめる。

 頬に触れるビロードの肌触りが心地いい。
 遠くで獣の咆哮が聞こえた。

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