ビロードの口づけ 獣の森編


 女は自分の子どもを産んでくれるかららしい。
 種の保存という強い本能が働いているとしても、自分より弱い女に平気で暴力を振るう事のある人の男より、よほど紳士ではないだろうか。

 もしも魔が差してクルミを襲う男がいたとしても、ミユが間に入れば守れるという事だ。


「ジン様のお仕事中はずっと奥様のお側にいるように仰せつかっています。だからご安心下さい」


 クルミとしてはありがたい申し出だが、それではミユの仕事に支障があるのではないだろうか。
 ミユは人社会で働くための修行中なのだ。
 ひと月くらいとはいえ申し訳なく思う。
 けれどミユはニッコリ笑った。


「奥様とお話しするのは楽しいし、人社会の事を聞かせてもらえれば勉強にもなりますからお気遣いなく」


 そう言ってペコリと頭を下げる。
 頭の両脇に結んだ髪が、かわいくピョコンと跳ねた。

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