ビロードの口づけ 獣の森編
「随分早かったんだね。もっとゆっくり愛を確かめ合って来てもよかったのに」
「ミユを待たせているのに、ゆっくりできるか」
「君がゆっくりしてくれたら私も彼女とゆっくり話ができたのに気が利かないなぁ」
「おまえの下心に気を利かせる義理はない」
ライは大げさに目を見開いて首をすくめて見せた。
そして全く気にした風でもなく、ミユに声をかける。
「ねぇ、ミユ。クルミ様も無事に帰ってきた事だし、返事を聞かせてもらえないかな?」
ライに向き直ったミユは、ペコリと頭を下げた。
「ごめんなさい。私、今年は子どもを産まない事に決めています。仕事に専念したいので」
「そうか。クルミ様の側仕えに決まったばかりだもんね」
少し残念そうにため息を漏らしたものの、ライは懲りもせず提案する。