ビロードの口づけ 獣の森編


 結月には優秀な子孫を残す事が最優先されるが、身体の相性もあるので繁殖期以外は相性のいい相手が好まれるのだ。

 結月の時にも確実に子どもを産もうとする女は複数の男と交わる。
 パートナーも女が自分以外の男と交わっているかもしれない事は承知していた。
 さすがに鉢合わせすれば揉める事もあるが。

 結月以外には愛情優先とはいえ、一対一にこだわる人間の恋人関係とはやはり違う。
 理解に苦しむのか、クルミは首を傾げていた。

 ミユはニッコリ笑って、またしてもキッパリと言い放った。


「申し訳ありませんが、私、好きな方がいます。来年もお試しも彼ひとりに決めています」

「おや、一点集中でいくんだ。それは残念だな。じゃあ、気が向いたらいつでも声をかけてね」


 調子のいいライはふられるのも慣れているらしい。
 特に傷ついた風でもなく、あっさりと引き下がった。

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