ビロードの口づけ 獣の森編


 クルミがニコニコしながらミユに話しかける。


「ミユに思い人がいるとは知らなかったわ。今年は子どもを産まないって言ってたから特定の人はいないのかと思ってた」

「あ、まだ想いは伝えてないんです。今度彼に会ったらお願いしてみるつもりです」

「そう。陰ながら応援させてもらうわね」
「ありがとうございます」


 ミユが満面の笑顔を湛えて頭を下げた時、ドカドカと荒々しい足音が部屋の中に入ってきた。
 皆が注目する中にやって来たのは、不機嫌そうなザキだ。
 ジンの姿を認めて不愉快そうに眉を寄せる。


「執務室にいないと思ったら、こんなとこにいたのか。女が見つかったって?」


 先に引き上げたライがザキに知らせてくれたようだ。


「見ての通り無事に見つかった。手間を取らせて悪かったな」

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