続・結婚白書Ⅱ 【手のひらの幸せ】


女二人 話が盛り上がり 俺の存在なんて忘れているようだ

人の馴れ初めなんて聞いて そんなに嬉しそうな顔が出来るんだなぁと 

俺にはそっちの方が発見だった



「それがさぁ 聞いてよ」


「うんうん 聞く聞く」


「玲ちゃん 僕と結婚するつもりがあるの? ってこう言うのよ 頭にきたわ」


「えーっ! それってひどいわね 冨田先生もそんなこと言ったの 

なんだかガッカリ」



えっ? そうなのか? この言葉のどこがひどいんだぁ?

結婚の意志を聞いただけじゃないか さっぱりわからない

それに今の円華の言い方 何かが引っかかる……

俺の思惑など気づきもせず 彼女らは そうでしょう ひどいでしょうと

意気投合していた



「だからね 私あの人に言ったの 『私に決めさせるの? 

アナタは私と結婚する気はないの? それって変じゃない 

普通は結婚してくださいって 男が言うものよ!』 ってね」


「よくぞ言ったわ さすが玲子先生 で 冨田先生はなんて答えたの?」


「私の反論にビックリしたみたい あっけに取られてたわ 

しばらくして 僕と結婚して欲しいって……もぉ~手のかかる男なのよー」



なるほどねぇ そういう事か

だけど 玲子さんのこの気風なら 女の方からプロポーズしてもいいくらいだ

そう思ったら 可笑しくなって声に出して笑っていた



「ちょっとぉ 工藤君 一人で何笑ってんのよ 

そういうアナタは まどちゃんになんて言ったのよ」


「俺ですか? えーっと なんて言ったかなぁ 忘れました」


「結婚しても一緒に海に行こうって そう言ったわ」



円華が澄まして答える

玲子さんが きゃ~男らしいわぁと 大げさに手を叩いた

はぁ 今夜は女二人に押されっぱなしだ

忘れかけた口説き文句まで飛び出して 俺の居場所はますます狭くなってきた

そう思っているところに 玲子さんのご主人の冨田先生が遅れてやってきた



「遅れてごめん 帰り際に外科部長に呼ばれて……」


「アナタのことだから真面目に話を聞いてたんでしょう 

あのセンセイ 話がくどいんだから」



それには答えず 冨田先生はニコニコと笑うだけだった




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