続・結婚白書Ⅱ 【手のひらの幸せ】


タクシーを拾っても良かったが 酔いざましに4人並んで街を歩く

さっきは散々な言いようだったのに 玲子さんは冨田先生の腕に

しっかりつかまり たまにはこうして歩くのもいいわねぇと 

至極ご機嫌だった

俺達も手を繋いでいたが 玲子さん夫婦の仲の良さには負けている


じゃぁねー また来週 と 玲子さんの元気な声

いつもより酔いがまわった玲子さんを 冨田先生が抱くようにして

マンションの中に入っていった



「なんだかんだ言って仲がいいわね 玲子先生 ダンナ様に惚れてるもん」


「あはは そうだな 冨田先生だから上手くいってるのかもな」


「そうねぇ 玲子先生が 冨田先生に結婚するつもりがあるのって 

詰め寄ったってことよね」


「そうなるな 玲子さんらしいや いいじゃないか 今があるんだし」


「そうね……」



円華の顔が曇ってきた

急にどうしたんだろう 気分でも悪いのかな



「私は 要に ちゃーんとプロポーズしてもらったもん あー良かったぁ」



そう言うと 繋いだ手をいきなり前後に振り出した

なんだぁ? 今度はハイになったのか?



「ねぇ 久しぶりに海に行こうよ 

結婚したら一緒に行く約束だったでしょう?」


「あっ あぁ……だけど胃の具合は大丈夫か? 船酔いするんじゃないか?」


「大丈夫 大丈夫 海風を浴びたら ぱーっと気分が晴れそう 

ねっ 行こう行こう!」


「うん……じゃぁ 明後日な」



「わーい!」



大きく万歳をしてから俺に抱きついた

理解しがたい女房の変化に頭をひねったが ふとさっきの円華の言葉が蘇った 


”冨田先生もそんなことを言ったの”


冨田先生も……も……って……

誰が言ったんだろう……


若林課長の顔が浮かんで すぅっと消えていった




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