続・結婚白書Ⅱ 【手のひらの幸せ】


「円華はこれからね いいわねぇ 若いご主人で 

子供の扱いにも慣れてるみたいだし

早く産んじゃいなさいよ ぱぱっと続けて年子でもいいじゃない」


「ウチの母と同じこと言わないでよ まだ結婚したばかりなのに」



ここでも子供の話 俺達は どこに行っても同じことを言われていた



「円華さん 仕事はまだ忙しいの? 大変だったって聞いたけど」


「ううん もうそれほどでもない みんな気を遣ってくれて

早く帰れって言われてるの」



和音さんは 元の同僚が出産祝いに来てくれたとき 円華さんのことを

聞いたのだと言う

若林さんが応援に来てるって聞いたと告げると 円華は 

”そうだけど 滅多に会わないわね”と 曖昧な返事をした

俺がいない方が話しやすいだろうと 気を利かせるつもりで外に出て 

円華が出てくるのを待つことにした


ここでもまた若林か

俺の知らないことが語られる度に 若林って名がでてくる

けれど以前ほど気にならなくなっていた 

今が大事と言った円華の言葉は 俺にとって何物にも変えがたいものに

なっていた





「今日は工藤さんに会えて良かった 円華さんのこんな顔見られるなんて 

すごく嬉しい

円華さんの良いところをわかってくれる人が きっと現れると思ってた……」


「和音ちゃんには いろいろ心配を掛けたもんね 

私 彼といると深呼吸できるの」




「わぁ~言ってくれるわぁ 待ってて正解ね」


「うん まぁね」



帰り際に 玄関先から聞こえてきた 円華と和音さんの会話

俺といると深呼吸できるのかぁ へぇ~そうなのかぁ  

女房のノロケに 俺は単純に気を良くした 


車まで見送りに来てくれた和音さんのダンナさんに 

「今度は円華さんの番ですね」 と言われ

「頑張ります!」 と答えた俺の背中を 円華が思いっきり叩いた




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