続・結婚白書Ⅱ 【手のひらの幸せ】



円華から 会社の後輩の出産祝いに一緒に行って欲しいと言われ 

秋の一日 ドライブを兼ねて遠出をした

初対面の俺が一緒でいいのかと思ったが 彼女がどうしても俺に会いたいと

言っているとかで なかば強引に連れて行かれた



「どうしても要に会いたかったんだって 

私がどんな人と結婚したのか すごく興味があるらしいわよ」


「ふぅ~ん 人のダンナがそんなに気になるのかなぁ」


「8歳も年下ってのが とっても気になるみたい 

彼女のご主人の方が要より一歳上なんだって」


「はは……じゃぁ今日は俺のお披露目なんだ せいぜい行儀良くしてるよ」 





お宮参りが済んだばかりだという赤ちゃんは 泣くのが仕事とは言え 

俺達が着いてからずっと泣きっぱなしで 赤ん坊の両親である桐原さん夫婦は 

母乳を与えたり交互で抱いたりと せわしく動いている



「せっかく来てもらったのに泣いてばかりでごめんなさいね 

夜もこの調子で大変なの」


「和音ちゃん お母さんの顔をしてるわ 良かったわね 

高志さんもいるし大丈夫よ」


「もぉ 円華さん人事だと思って呑気なんだからぁ 本当に大変なんです

円華さんだってもうすぐですよ その日のための練習です 

はい 抱いてください」



和音さんは ふにゃふにゃと泣いている赤ん坊を円華の腕に渡した

いきなり渡された方の円華は 子供をどうしていいのかもてあまし 

緊張したまま抱っこしていたが 腕を少しずらした拍子に 

まだ首の据わらない子供の首がガクンと揺れ 

わっ! と 赤ん坊を落っことしそうなほどの声をあげた



「俺に貸して」



おっかなびっくりの円華の手から赤ん坊を抱きとり 首を支えながら

縦に抱っこした

次第に泣き声が収まり ふぁ~と小さなあくびをし 可愛い顔を向けてくれた



「要って赤ちゃんの扱い上手いわね 慣れてるじゃない」


「姉貴のとこの子供の面倒みたからね 首の据わらない子でも 

縦に抱いてやると泣き止むことが多いんだ」



へぇ~と三人が頷き そこにやってきた和音さんのお姉さんにまで

感心されてしまった

円華と同級生のお姉さんは 子供はすでに中学生で 久しぶりに見る

小さな子が可愛くて仕方ないと言う



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