続・結婚白書Ⅱ 【手のひらの幸せ】
「まどちゃん まだ胃の調子が悪かったの?」


「うぅん 最近はそんなことなかったんだけど 今朝熱っぽかったから 

風邪かなぁ」



玲子先生がカルテに書き込みながら 円華の様子を伺う



「君のことだから また無理をしたんじゃないか? 

熱があるなら今日は帰った方がいい」


「若林さんの言う通りよ そうねぇ 一応病院に行った方がいいわね 

この前のこともあるし工藤君お願いね」


「はい そうします」


「もしかしたら もしかしてってこともあるし」


「もしかしたらって 何か心配なことでもあるんですか?」


「行けばわかるわよ 検査をしたらすぐに結果が出るから 

これ 病院側に渡して」



玲子先生が所見を記した書類を俺に渡した

俺達のやり取りをじっと見ていた若林さんが 怪訝そうに尋ねる



「君たち……広川のご主人って……工藤君なのか?」


「はい そうですけど それが何か?」



若林さんの切れ長の目が大きく見開いている 

あっけにとられたとは まさにこんな顔だな

実に気持ちのいい瞬間だった



検査の結果 俺と円華は思いもかけぬ喜びを分かち合うことになった

病院をはしごしたあと 診察した医師の 6週目ですよ の言葉に 

思わず二人で円華の腹部を見つめた





「協力するヒマもなかったな……」


「なに言ってるの これからでしょう よろしくね」


「あぁ 体調の悪いときは無理しないでくれよ」


「わかってる……おとうさん 喜ぶわね」


「うん 大喜びだろうな」 



今夜はお義父さんと飲み明かすことになりそうだと 俺は嬉しい覚悟を決めた






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