続・結婚白書Ⅱ 【手のひらの幸せ】


台所の奥から お義母さんと円華の楽しそうな声が聞こえてくる

娘と母親は 話しても話し足りないのか 会えば飽きることなく話をしている

こっちは お義父さんと 静かに酒を酌み交わす



「仕事はどうだ? 残業が多いんじゃないのか?」


「いえ それほどでもないです 今は 円華の方が忙しそうです」


「そうなのか そんなことで家の事が務まるのかね 

要君 しっかり円華を管理しなきゃいかんぞ」


「お義父さん管理なんて お互いが出来ることをやっているので大丈夫ですよ」


「そんなもんなのか? 私らの世代からは考えられんな」



そう言うと ビールをグイと流し込んだ

空のコップを眺めながら 視線は指先に落としたまま



「その……どうなってる そろそろどうだ」


「どうだって なにがです?」


「いや……もう気をつける必要はないんだぞ」



口にしたビールを吹き出しそうになり 慌てて口元を手で押さえた



「結婚して3ヶ月ですよ まだ早いですよ」



後ろからお義母さんの高らかな笑い声がした



「お父さんったらね 子供はまだか まだかって そればかりなの

アナタ達だって 新婚を楽しみたいでしょう 

お父さん プレッシャーをかけちゃだめですよ」


「なんだよ 悪いか 俺は早く孫の顔が見たいんだよ

浩輔んとこの子供なんて 嫁の方にばっかり行きやがって

こっちにはあんまり顔もみせんだろう 内孫ったって 

実質は嫁方の孫じゃないか」



円華には4歳年下の弟がいて 結婚して子供もいる

県外に住んでることもあって なかなかこっちには帰ってこられない



「お父さん そんなこと 仕方ないじゃないですか 

浩輔には浩輔の事情があるんですから」



お義父さんはバツが悪そうに 手酌でビールをついでガブガブ飲んでいる

結婚の承諾をもらうのに苦労したお義父さんだが

その後は ぶっきらぼうながら俺にも良くしてくれる

子供か いま出来たら大変だろうな……




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