思春期の恋



制服のポケットに両手を突っ込んだまま柊司は振り返った。




ちょっと、待って・・・


今、そこまで行くから。




片足引きずりながらも急いで柊司の元へと歩いた。



痛い・・・痛っ。。。。いったい!!




もう、この足・・・超もどかしい!!



そんな私の姿に見兼ねてか、柊司が私の元へとゆっくり歩いてきた。

そして私の腕を掴んで、顔を覗き込んできた。







「呼んだ?」








「・・・うん」







「なんて?」





え。



「しゅ・・・【柊司】って・・・」






そう答えると、


柊司は大きな瞳を細めて優しく微笑んだ。




あ・・・
笑顔はあの頃とおんなじなんだ・・・




笑うと瞳が全部黒目になっちゃうんだよね・・・柊司って。



目の前で笑う柊司を見て思い出した。



私、柊司の笑顔が好きだったんだ。



だから、笑ってほしくて、




私、笑ってほしくて・・・





やっと




やっと




また


私に笑ってくれた・・・







ずっと避けられていて、辛かった。

いきなり突き放されて、さみしかった。






「もう、絶対に柊ちゃんって呼ばないから、



嫌われるようなことしないから、


だから、

また一緒にいたい。



避けられたりするの、辛すぎる」


我慢していた涙が、


避けられていた約5年間分の涙が、

一気にこぼれ落ちた。




私、こんなに辛かったんだ・・・





掴まれた腕と反対の手で目をこすった。







その時、掴まれていた腕を引っ張られて、

バランスを崩したまま柊司に抱きしめられた。









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