† of Human~人の怪異
(なにか飛び出した……か)

と、自分で思っておきながら、和幸は笑った。

『なにか』ではない。自分は、なにが起こったのか、知っている。

なにせ、崩落している校舎の騒ぎの中枢は、自分達のいた教室であり――

飛び出していったなにかはほかでもない、あのクラス委員長なのである。

巻き起こった、あまりに様々なことが濃縮された数瞬を思いだし、

「は、は、はは……」

とりあえず、和幸は笑った。

悲しみを覚えるには、体験したことが大きすぎた。

怒りを覚えるには、自分の存在が小さすぎた。

だから、笑うしかない。

そんな和幸を――唯一の生き残りとなった少年を、気が狂ったものと見て、野次馬が気味悪そうに見た。
< 12 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop