† of Human~人の怪異
区長の実年齢は、わからない。知っているのは名前と、顔。役職だけ。

もっとも、上野は詮索するつもりはない。

気にはなる。しかし彼のすべてを追求していては、人間の器では間に合わない気がした。

超越者にでもなれば話は別だろうが――上野楓は、†に触れるつもりは毛頭なかった。

『それで布陣についてなんだけどね』

区長が話を広げるのに、

「あ、待ってください」

上野は慌てて周囲を見渡した。

帰り道、街灯ばかりが並ぶ、ほの暗い住宅街。自分以外には特別、人は見当たらない。

ならばこのまま、普通に歩いていたほうがいいか。

「はい、構いません」

答えると、区長は改めて言った。

『うん、布陣なんだけど、今回の作戦は君ひとりに任せてもいいかな』

「私にですか」

『そう、君ひとり。もちろんバックアップの結界とか、万が一に備えての控えや救護は用意しておくけど、実質的な粛正については君に一任したい。任せられるよね?』

「問題ありません」

と、二つ返事。
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