† of Human~人の怪異
一度で十回の斬撃を繰り出す剣は、桜庭の蛇を一気に切り刻む。

どんな大きさであろうと、群がる刃の奔流にさらされれば、細切れになっていくのは必定。

桜庭の大蛇一匹を駆逐するのに、一秒あれば充分だった。

さらに距離を詰め、怒鳴る。

「凶行をやめ、改心しなさい!」

「なにが、凶行だよ!」

が、桜庭も言うことを聞かない。残っているもう一匹が、その大口を開いた。

もっとも、

「射ろ!」

自分の敵では、ない。

宙へ突き出した剣から三本、同じこしらえの剣が撃ち出され、蛇の喉を貫く。

その先、桜庭紅蓮の胸、肩、胴をも。

「は、ぐ……!!」

呼気と血潮を吐き、桜庭の体が砲弾を食らったように吹き飛ぶ。

そして校舎に衝突。ずがん、と少年を貫いた剣が、コンクリートまで砕いた。蜘蛛の巣のような亀裂が、走る。

放った三本の動きを頭の中で、手元に返ってくるよう想像する。

それだけで、剣は空中を舞い、自分の周囲に浮かんだ。

壁に叩きつけられた桜庭が、よろめく。

右の蛇は胴からなくなり、左の蛇は口から喉を突き破られ、びくびくと震えている。
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