† of Human~人の怪異
「っ、か……やるね、上野さん……図書委員のくせに」

意味のわからない貶しに、上野は答えない。

肝心なのは、桜庭がここで死を選ぶか、悔い改めるかである。

†は、己の本質である。

本質に触れれば、その存在は飲み込まれてしまうが、飲み込まれた状況からさらに、自己統御することも可能である。

もっとも、その自己統御に至るには己の本質を見極め、これを封印しなければならない。

カ ン タ ン
簡素簡潔に言えば、自重。

しかし、そのたった漢字二文字の行いが、難しい。

上野は、そのことをよく知っている。

だから、忠告を続ける。

「桜庭くん、何度でも言います。凶行をやめてください。さもなくば、アナタを粛正のもと、排除します」

言葉の最中に、剣に収納していた残りの六本も、空中へと浮かばせる。

九本を撃ち出し、標的を磔にした上で、首を落とす。

『図書委員を務める物静かな少女』には似合わないだろう、容赦ない斬首が、自分なりの、終止符の打ち方である。
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