渚の平凡物語
 まるでRPGゲームのようだな、と思う。

 名前や立ち絵がばっちりある主人公と、主人公が旅先で出会う名もなきモブキャラ。
 これ、今のあたしたちに当てはまりそうだなぁと色々想像してしまった。

 後ろの方の目立たない席でそんなことを考えていると、女神様がいそいそとこちらへやって来た。……え?

「渚ちゃん、学校案内してくれない?」
「へ?」

 笑顔の女神の背後に、こちらを面白くなさそうに見つめる幾つもの目。
 まさかとは思うけど、クラスメイトたちの好意を蹴ってこちらへ来た、とか?

 あまり親しくもないクラスメイトの目に不穏なものを感じたあたしは、たらっと汗をかく。

「慣れるためにも、クラスのみんなと行った、ら?」

 色々突き刺さる視線が痛い。あたしたちの関係を邪推してそうな好奇心も辛い。

「やだ。渚ちゃんがいい」

 そういえば同学年だっけ、と気付く幼さを見せてくれたけれど、ちょっと空気読もうか、うん。
 誘いを断られた恨みがこちらに来そうだ。っていうかもう既に睨まれてるよあたし。派手なグループに目を付けられたら一巻の終わりなんですけどあたしみたいなモブキャラ!

 ここで断ってもまずいなと大人しく席を立ち、女神の横に並んだあたしに鉄槍が飛んできた。

「すげー……同じ女には見えねぇ~」

 どちらがどうか、などと訊かなくともわかる。ので、あたしの胸に極太の言葉の棘が突き刺さる。
 悪意のない感心したような、ただ見たままを述べたような言葉だったから、痛みは尚更。それが男子生徒だったのだから、余計に傷ついた。

 デリカシー皆無のクラスメイトよ、不細工でも痛みを感じる心はあるのだよ。
 疲れた眼差しだけ送っておいた。

 いつかそのデリカシーの無さで自滅するといいなんて思ってないよ、うん。
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