渚の平凡物語

校舎裏呼び出し

「ちょっと、聞いてるの?」
「腹違いの妹だか何だか知らないけど、巴を煩わせないでって言ってるの!」

 校舎の陰になっている場所に連れ込まれ、説教されること十五分。身に覚えのない話ばかりで、あたしは完全に虚ろな目をしてうな垂れていた。

 これって少女漫画でよくある、「○○君に近付かないでよ!」てシーンじゃね?
 おかしくない? だってこいつら姉のことで説教してやがるし。同性だよ? 普通完璧超人は嫌われるものなのに、もはや信者だよ。迷惑だ。

 あたしが付き纏っているわけではない。むしろ付き纏われている。拒否ると勝手に落ち込んで何故かあたしが怒られるので、それさえも出来ないだけだ。

 信者が仲良くなりたいのなら勝手にすればいい。が、あのKY女神ときたら、その信者に目を向けもしない。もちろん話しかけられたら話すし、にこやかに応じるのだが、何故か優先順位はあたしが上だ。故に苦情はこちらに来るというわけ。

「あんたなんか一緒に並ぶと凄い不釣り合いじゃない。巴の方が顔が小さいし、足だって長いし胸も大きいし。横に並ぶなら読者モデルレベルじゃないと変よ!」

 あー、なるほど。目の前の彼女たちはティーン雑誌のモデルか何かしてるんだろう。確かに垢抜けている。が、糾弾というよりあたしの悪口大会になってるのが気にかかる。

 綺麗な者同士好きにつるめばいいじゃない。あたしに迷惑かけんなよ。最近こんなんばっかだ。

「えと、あたし別にあの人が誰と仲良くなろうがどうでもいいんで……」
「はぁー!?」

 信じらんない、と言いたげに、マスカラつけた睫毛がぱっちり開く。怖ぇ。

「は? 何言っちゃってんのあんた? 関心ない振りして気を引こうとしてるわけ?」

 何でそうなる。

 我慢できなくなって溜め息を吐くあたし。ますます怒り狂う信者ども。
 小突き回され押されまくり、最近のあたしは生傷が耐えんのだ。

 ホンットあの姉……あたしにとっちゃ疫病神だ。
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