渚の平凡物語

浄化パワー

 同じ生き物だと思われたくない、と心の底から思った。
 それなのに。微妙なお年頃をわかって欲しいのに。
 母は無情にも、あたしに隣に座れと言うのだ。

 ……何の罰ゲーム?

 指先から腕から腰から何から、もう全てが違う。同じ神様が作ったとは思えないような造形。
 細さ、肌のきめ細かさ、目に付く全てが不公平。自分のぶくぶく太った体と、同じ服は絶対似合いはしないという確信が、あたしを追い詰める。

 悲しいかな、性格も断然彼女の方が良いのだろうと想像がついた。
 笑顔なのだ、人を傷つける意思は感じられない。そんな彼女にマイナス感情を向けることは到底出来ず、どつぼにハマっていく。
 ああ、あたし何てことを考えてたんだろ。邪魔者みたいに思って、彼女の来訪を快く思っていなかった。痛い痛い痛い痛い、あたしの良心が。

 にこにこしている彼女の隣にいると、側面が焼け焦げそうだ。そう、まるで聖なるものに浄化される魔性の如く。
 どうしよう、悔い改めたら良いのだろうか、告解に赴けば良いのだろうか、存在すら申し訳なくなってきた。

 何だこれ、何なの。あたしの中でもう既に全面降伏しちゃってんだけど。あたしどんだけ。

 多分母だって複雑な気持ちはあったろう。けど、見ている限りではこの同い年の姉に特に何か思う様子はない。それは多分、彼女が──

「これからよろしくね、渚ちゃん」

 悪意を感じさせない善人だからだろう。

 彼女に焦がされそうになっているあたしは、妖怪か悪魔か何かなのだ、きっと。
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