ちょっと言い訳(3p)
再会
 
「お、俺だよ」

聞き覚えのある声に空気が止まった。



「驚かせちゃった?」

ちらりと声の主を確かめる。

(やっぱり・・・)


三ヶ月ぶりに見る顔は幻のよう。
でも、間違いなくその人は
私が大好きだった人。

(でも、どうして?)


「そっか、この子を迎えにきたんだ」
(ダメ。そんなこと言っちゃ)

「ほら、ご主人様だよ。良かったね。君は捨てられてなんかいなかったんだよ」

おもわず声が詰まる。
涙を悟られないよう伏せ目がちに、手に持った首ひもを差し出す。


「そうじゃないんだ」
(いいえ、ちゃんとわかってる。いろいろ噂は聞いている)

「やっと帰ってこれたんだ。あの日、宇宙人に捕まっちゃってさ。UFOに乗せられて、本当だって。ついさっきまで捕まってて、気が付いたらここに倒れていたんだ」


そっと顔を上げると真面目な顔をして真っ直ぐに私を見つめている。

「どんなに非道いことをされたか、家に帰ってから教えてあげる。ほら茶太郎、行くぞ」

首ひもを受け取り、有無を言わさず、私の手を取った。

(宇宙人だなんて)

あまりにバカバカしくて、
涙もどこかへふき飛んでいた。


肩をぶつけて歩きながら、でも
ちょっと信じてみようと思っていた。


       おわり
 
      
< 3 / 3 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

ちよりさん

総文字数/3,850

その他13ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
  樋井川に架かる別府橋の近くに まだ「我留舎」はあるんでしょうか。 そこに毎晩のように通い、 鶏の唐揚げを食べながら ビールを飲んでいた ちよりさんは元気にしてるでしょうか。 わたし もうすぐ、会いに行きます。  
わたしのピンクの錠剤

総文字数/77,587

その他264ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
    【プロローグ】   それまでわたしは 普通の9歳の女の子、 そう、思っていた。 でも、 今ではもう 自分の本当の誕生日さえ わからない。 ・ ・ ・ 大幅に加筆修正しました。  
お風呂上がりの望遠鏡

総文字数/22,743

その他83ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
  望遠鏡で覗くと 敵は 二十歳そこそこの 男の子だった きっとひとり暮らし わたしが 神経をすり減らしているのに のほほんと 暮らしていた 許せない わたしの反撃が 始まった

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop