君のいる世界




墓地は夕方の安らかな雰囲気から一転姿を変え、ぼんやりと灯る外灯がお墓を照らし不気味な雰囲気を醸し出している。


その雰囲気が私の不安をより一層強くさせた。




躓きながら何とか最後の石段を降り、明かりが灯る客殿の桶置き場で会長の姿を見つけた。



「会長!」



会長は私の声に反応し振り返るものの、すぐに背を向けて歩き出す。



「…っ!」



足が震える…


今の私を見る目が、憎しみで溢れていた。


怖い…でも、追い掛けなきゃ…




「ちょっと待って!」



私は全速力で会長に駆け寄り、腕を掴んだ。




会長は足を止めてくれたけど、私を一切見ようとしない。


でも今は手を振り払われないだけで嬉しかった。


だけど、それは一瞬で打ち砕かれてしまった。



「悪いけど、一人にさせて」



そう言った会長は、私の手からするりと腕を抜いて暗闇の中に消えて行った。




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