君のいる世界




一瞬、何が起こったのかわからなかった。


数秒経っても痛みも何も感じない。




トミさんと康君はハッと息を呑み、心配そうに私達二人を見守っている。




私は叩かれた勢いで横に向いた顔を、恐る恐る佳菜子の方へ向ける。


すると佳菜子は目から大粒の涙を次から次へと流し、唇を思いっきり噛み締めていた。


その様子に、私は思わず目を見張る。




「佳…菜子…?」



「自分を犠牲になんかしないでよ!自分自身をもっともっともっと大切にしてよ!!麗奈は復讐の道具でも家の道具でもない!!!」



そう休まず言い切った佳菜子の息は乱れ、それを整えるように息をついた。


その間も溢れ出す佳菜子の涙は、透き通るように綺麗で私の心を打つ。




< 242 / 497 >

この作品をシェア

pagetop