君のいる世界
一瞬、何が起こったのかわからなかった。
数秒経っても痛みも何も感じない。
トミさんと康君はハッと息を呑み、心配そうに私達二人を見守っている。
私は叩かれた勢いで横に向いた顔を、恐る恐る佳菜子の方へ向ける。
すると佳菜子は目から大粒の涙を次から次へと流し、唇を思いっきり噛み締めていた。
その様子に、私は思わず目を見張る。
「佳…菜子…?」
「自分を犠牲になんかしないでよ!自分自身をもっともっともっと大切にしてよ!!麗奈は復讐の道具でも家の道具でもない!!!」
そう休まず言い切った佳菜子の息は乱れ、それを整えるように息をついた。
その間も溢れ出す佳菜子の涙は、透き通るように綺麗で私の心を打つ。