君のいる世界




「そういえば、まだ直幸君が来ていないようだが…」



谷本と古い付き合いの鈴木財閥の会長が会場を見渡す。


小出財閥の社長と社長婦人の姿はあるけど、直幸さんはパーティーが始まって1時間を過ぎても来ていなかった。




すると、入り口の方がやけに騒がしくなった。




「おっ!噂をすれば、婚約者の登場だな」



そう言うと鈴木会長は「邪魔者は退散するよ」と何処かへ行ってしまった。




私は鈴木会長にお辞儀をし、直幸さんに目を向ける。


入口でボディーチェックを済ませると、きょろきょろと辺りを見渡しながら会場に入ってきた。


そして視線が重なると爽やかな甘い笑みを浮かべて一直線に私に向かって歩いてくる。


その腕の中にはローズピンクの薔薇の花束。


胸がトクン、トクンと鼓動を繰り返す。


周りにいる人達は、私と直幸さんの間に道を開け遠巻きに好奇の目で見ている。




やがて、直幸さんは私の前で立ち止まった。





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