君のいる世界




「ところで、俺はいつまで“会長”なの?」



会長はそう言って私の顔を覗き込んでくる。



「え…?いつまでって…」



「見合い相手は名前で呼んでたろ?」



「それは…その…」



今までずっと“会長”って呼んでたのに急に名前で呼ぶなんて、恥ずかしくて簡単に出来ないよ…


こうして想いが通じ合って、今のこの態勢でいるだけでも顔から火が出るほど恥ずかしいのに。




「俺の名前は呼べない?」



会長は口籠っている私に、更に追い打ちを掛けるように艶っぽい声で言った。


その熱っぽい眼差しから目を逸らせない。




「…だ……だい……っ、無理!恥ずかしいよ…」



私は頬を真っ赤に染めながら、やっとの思いで顔を背けた。


名前を呼ぼうとしただけで、こんなにも心臓が破裂しそうなぐらい鼓動している。


そんな私に名前を呼べだなんてハードルが高過ぎるよ…





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