君のいる世界
「麗奈…今まで迎えに行けなくてごめんね…もう少し軌道に乗ったら迎えに行こうと思っていたの。あなたに不自由させたくなくて」
「私…お母さんがいてくれたら不自由でも貧乏でも構わない。もう17だもん…弁当屋の手伝いも、家事だって頑張るよ…」
声が震える。
視界が涙でぼやけてお母さんの顔が見えない。
するとお母さんの影が砂を踏む足音を鳴らしながら近付いて来る。
そしてベンチに座る私の隣りに腰を下ろすと、膝に置いていた私の手を取ってギュッと握り締めた。
懐かしくて温かいお母さんの手。
ずっと会いたかった…
この手で頭を撫でて、抱き締めてもらいたかった…
数年振りに近くで見たお母さんは、皺が増え手はカサカサに荒れて、心なしか小さくなっていた。
だけど優しい笑顔も安心させてくれる温もりも私を呼ぶ声も、私を大切に想ってくれてるところも昔と何も変わっていない。
私の大好きだったお母さんのまま。