君のいる世界




火を付けた線香から白い煙がゆらゆら上がる中、二人並んで瞼を降ろして手を合わせる。


頭の中でお父さんに改めて挨拶をした。




やがて目を開けて隣りを見ると、大輝は優しい表情で手を合わせている。


その表情にトクンッと心臓が跳ね上がった。




羨ましいぐらい長い睫毛が目の下に影を作り、くっきりと突き出した喉仏が何とも色っぽい。


そして何よりも優しくて頼もしいこの顔が、私の心臓をもっともっと煩くさせる。




この顔は家族の話をしたり考えてる時に見せる顔で、家族を心から慈しむ気持ちが溢れている。


家族を大事にしている大輝は、誰よりも逞しくて男らしくてかっこいい。





「何見惚れてんだよ?」



私が大輝の横顔に魅入っていると、いつの間にか大輝は悪戯な笑みを浮かべて私を見ていた。


一気にカアッと頬が熱くなる。





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