君のいる世界
「さて、そろそろ帰るか」
そう言って立ち上がった大輝は、「ゔーっ…」と両手を上げて背伸びをしている。
もう大丈夫なの?
自分を責めたりしてない?
…いなくならないよね?
心配と不安で、聞きたいことは山程あるけど、何だか聞いてはいけないような気がして言葉を飲み込んだ。
「どうした?」
いつまで経っても立とうとしない私に、大輝は柔らかい笑みを浮かべて聞いてくる。
「ううん、何でもな……っ、え…」
その時、この時期には珍しい暖かい風が私達を包み込むように吹き、ふわっと二人の髪を攫った。
それはさっき大輝に身体を寄せたとき伝わってきた“温かい何か”と似ていて、心地いいというか不思議と安らかな気持ちにさせる。
「親父…」
大輝は呟くように言いながら、私の横で空を見上げている。
家族の事を想ってるあの優しくて頼もしい顔で。