君のいる世界
「それは神崎里緒奈さんでしょ?」
「え?どうして里緒奈のこと…」
彼女の名前を出すと、恵介さんは目を丸くして驚きを隠せないようだった。
私は鞄に入れておいた神崎さんの手帳を取って恵介さんに差し出す。
「昨日彼女とぶつかった時に手帳を落としたみたいで…中に入ってる写真を見てしまったの」
すると恵介さんは手帳を受け取り、写真が挟まったページを開いて写真に写る神崎さんを愛おしそうな眼差しで見つめる。
「手帳落としたのも気付かないなんて、ホント馬鹿な奴」
言葉は乱暴だけど、その声からは愛情がたくさん感じられた。
「谷本さんは言いなりになったままでいいんですか?里緒奈から聞きました。生徒会長と付き合ってるって」
「私ね、彼が幸せに暮らしていけるなら自分が我慢することぐらい容易いことだと思ってたの。でもそれは私の独り善がりだった。そのせいで大切な人を傷付けて…恵介さんや神崎さんも巻き込んでしまった」
左手の薬指に輝く指輪にそっと触れた。
クリスマスに大輝に貰ったダイヤの指輪は、まるで大輝が側にいてくれているかのように心強くて私を支えてくれる。