君のいる世界





祖母は大輝の言葉で9年前祖父が失くなった時のことを思い出したんだと思う。




かつて祖父がまだ生きていた頃、この家にも温もりはあった。


当時の祖母はまだ愛情たっぷりの優しい笑顔を持っていて、私はそんな祖母が好きだった。


庭で縄跳びをしたり、日の当たる縁側で祖母に膝枕をしてもらったり。


私と祖父は大黒柱に背を当てて身長の測り合いをしたり。


今も檜の大黒柱には、私の成長の印が刻まれたまま。


その線は、祖父が亡くなった小2の夏で止まっている。




今思えば、祖母が変わってしまったのはあの夏から。


笑顔は消え、言葉数も減り、この屋敷から温もりが失くなった。




そしてお母さんに当たるようになり、私にも厳しくなったんだ。




どうして祖母は“感情を抱くこと”をこんなにも蔑むようになったんだろう。


祖父が生きていた頃までは、確かに祖母にも情はあったはずなのに…




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