君のいる世界




嬉しかった。


祖母に認めてもらえたこと。


もう一度、「おばあちゃん」って呼べたこと。


大好きな祖母の笑顔が見れたこと。




もう二度と、こんな日が来ることはないって思ってたから…






その時、さらっと縁側から応接間に風が吹き抜け頬を摩った。



「お祖父さん…」



祖母は庭に目をやりながら、側にいる私と大輝にしか聞こえないぐらい小さい声で呟いた。


目を細めふっと微笑んだ祖母の横顔からは、もう苦痛も孤独も感じられない。




おじいちゃん。


もう、おばあちゃんは大丈夫だよ。


一人ぼっちじゃない、これからは私達がいるから。




だから安心してね。




冷え切った屋敷には、数年振りに笑顔と温もりが戻った。


庭にあるししおどしは、これからもずっと音を奏で続け、私達を癒し続けてくれる。


おばあちゃんと縁側に座ってその音を聞きながら思い出を懐かしむ日は、もうそんなに遠くない。





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