君のいる世界




父親が朝早くから仕事に行ったのは知っているし、私達がここへ来ることだって今朝突然決まったばかりで専属執事の康君ですら知らない。


そもそも父親がお母さんと一緒にいるなんてどう考えてもおかし過ぎる。




するとお母さんは湯呑みをそっと置き、隣りに座る父親と視線を交えた後これまでの事を話し始めた。



「私が出勤中に険しい顔付きで自転車に乗って、学園とは反対方向に走ってく二人の姿を見たのよ。大輝君に今回のこと話したばかりだったし、方向から推測してここに向かってるんだってことは安易に予想出来たから。乗り込んで抗議してもし上手くいかなかったら、最悪駆け落ちしちゃうんじゃないかって…そう思ったら気が気じゃなくてお父さんに助けを求めたの」



父親はお母さんからの電話で全てを知って、すぐに康君にお母さんを迎えに行かせてここに来たらしい。




だけど、まだ何か腑に落ちない。


今の話からすると、お母さんは父親に直接電話したって事になるけど…


でも、二人とも離婚してから携帯を変えたはず。


私がお母さんの前の番号に何度電話を掛けても【この番号は現在使われていません】って無機質な機会音が流れて、その度に寂しくて仕方がなかったのを覚えてる。


なのにどうしてお母さんは父親に電話を掛けられたの?




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