君のいる世界




大輝の家に初めてお邪魔した時、そこには私の思い描いてた【家族】の姿があった。


たくさんの笑顔と温もり、そして愛。


居心地が良くて、心がほっこりして、何だか凄く懐かしい感じがしたんだ。


うちも祖父が亡くなるまでは中澤家のように活気に満ち溢れていたから…




すると机の向かい側に座っていた父親が、私の目の前に座って柔和な眼差しを向けた。



「今日から、どこの家にも負けないぐらい暖かい家族を作ろう」




何度…


何度夢に見ただろうか。




この8年間数えきれないぐらい、この瞬間を夢見てた。


目が覚める度に、一生叶う事のない夢だと思って一筋の涙を流してきたんだ。




「そうね。休みの日は皆で鍋を囲って、テレビを見て笑って…麗奈の夢、叶えよう?」



そう言いながらお母さんは父親の隣りに腰を下ろし、膝に置いてあった私の手をギュッと握る。


その瞬間、滝のように涙が頬を流れ、お母さんの手の甲に落ちた。





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