君のいる世界




一生叶う事なんてないと思ってた…


これは現実?


夢じゃないよね…?




「ああ…もう、麗奈ったら。ホントに泣き虫なのは変わってないわね」



お母さんは「ふふ」っと柔らかく笑って、私をそっと抱き寄せる。


鼻を掠めるお母さんの匂い。


頭を撫でる暖かい手。




ああ、これは夢じゃない。


夢じゃ…ないんだ。





あの広いだけの家に明かりが灯る。


あの孤独を感じる冷え切った家に笑い声が響く。


朝の食卓にはお母さんの手料理が並び、お父さんはいつも片手に開いてた新聞を置いて忙しない朝の中、ほんの一時の安らぎの時間を過ごす。




“おはよう”、“行ってらっしゃい”、“お帰り”、“おやすみ”




日常の挨拶を交わす相手がいるというありふれた幸せに感謝しながら、私は毎日朝を迎えて、そして眠りにつこう。


周りが羨むぐらい仲が良い家族になって、いつか私もそんな家庭を築くんだ。




私は暫くお母さんの胸の中で子供のように泣いた。


悲しみじゃなく、喜びの涙を。



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