† of Ogre~鬼の心理
言って、ドアを閉めた仁の足音が遠ざかってから、壁と一体になっているクローゼットを開け――

「――ああ……」

顔をしかめずには、いられなかった。

ハンガーにかけるでも、引き出しにしまうでもなく、服が放り込まれている。

赤い斑点模様の咲き乱れる、白地のブラウス。

手に取ると生ぬるく湿って、わずかに凝固していた。

しかも、べっしゃり薄紅色に濡れたレインコートが、ブラウスにくっついている。

「っ、ち」

舌打ち。

このブラウスは肌触りがよくて特段気に入っていたのだが、どうやら昨晩汚してしまったらしい。

「活きがいいのも考えものね」

くっついているレインコート、もう着られないブラウスをパッと床に落とし、クローゼットの中を漁る。

昨夜の私は、なかなかに上機嫌だったようだ。

ほかの衣類に生乾きの血が付着するのも気にした痕跡がない。
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