† of Ogre~鬼の心理
「俺も対峙した時に気付くべきだったが、アイツは存在感と違和感、力の塊だった。つまりありゃあ、本体が作り出した出力の末端装置、分身だ。本物に違いないが、本物ではない。で、だ。分身が消耗したのなら、本体がそちらへ新しい分身を送ればいい。結果としてそれは、置き換えられる前のヤツと同じものであり、かつ存在や力の回復、逆行現象でもなく、人形でもないというわけだ」

《なるほど。はは、これは一本取られたね、仁。ウリエルの一撃をくれてやるなら、本体にだった》

「まったくもって。が、気付いてしまえば話は簡単だろう」

《まあ、事実なんていつだって『気付いたら』っていうものだよ》

アルの相槌に混じって、ごごう、ごごうと風の音が聞こえた。おそらくアルは、その人間の範疇にない脚力で神速の跳躍を繰り返しているのだろう。
ビ ル
建築物の渓谷を飛び跳ねているスーツ男なんぞ見つかってしまっては大問題だろうが、心配は要らない。

アルはすでに南区内に入っている。
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