† of Ogre~鬼の心理
「はっ!」

と、振り出される殺意に対し、僕は冷静に対処する。

能力――『霧化』。

トンネルの闇に溶けてしまいそうな漆黒の粒子になった体が、女の刃に曝される。だけど、実害はない。ただ少し、霧の輪郭が掻き乱されるだけだ。

即座に集結し、実体化した僕は、右腕を突き出した。

「さ、こっちからもいこうか」

手の甲、人差し指と小指の付け根に煌々とした金色が点り、親指の間接付近を境目に、掌に棘が生えていく。棘は牙となり、掌は顎となる。

右腕が一気に肥大化した。肘から先がぶつりとちぎれて、僕と違う生き物になる。

僕の能力のひとつ。真っ黒い毛並みの『狼』が、金色の瞳に女を映した。

「行け」

たんとアスファルトを踏むと、僕の分身が駆け出していく。

「戯れな……!」

涎を垂れ流し過ぎの分身に、女が腕を振り抜いた。一度二度三度、振り抜いた。

不可視の攻撃が迫る。

見えはしないけど、三日月状の殺意が飛来しているのがわかる。

だけど、甘いよ、そんなもの。

瞬時の、一瞬の、霧化。

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