† of Ogre~鬼の心理
「ったく、真輝のみならずお前まで……なんだ、ずいぶんと辛酸を舐めさせられてるな。俺も一度は手合わせした相手だが……そんな苦戦するほど強敵か、アイツ?」

立ち上がったアルが、こちらへ歩み寄ってくる。むき出しの鉄板を踏む革靴の音は、かつんかつんと高い。

「あー……強敵、という、か……侮れない、厄介、なのは、たしか、だよ、うん。――はあ~ぁ……」

襟が裂け、袖がちぎれシャツが破れ、裾やボタンがボロボロになってしまったスーツが気になるのか、アルはやけに気落ちしている。

今、ざあっとらしい溜め息まで漏らしやがった。ええい、女々しい。

つい昨日スーツ一着無駄にしてしまった俺が言うのも悪いが、こんな時にもなって、服でそんなに落ち込むな。どうせお前の部屋には、同じようなスーツがあと何十着とあるだろうに。

それでもほとほと、スーツの無惨さを胸中で嘆き尽くしたのか、やや復調した様子でアルは小首を傾げる。

男にしては長めだろう金髪が、キザったらしくさらりと揺れた。
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