† of Ogre~鬼の心理
だがそれでも、よほど〝白夜〟の名前を出されたのがイヤだったのか、それとも単に、本当に単に〝白夜〟を嫌っているのか、苦手にしているのか、あるいは恐れているのか、アルの表情は険しい。
眉間のしわ、吊り上がった眉に、奥歯を噛み締めた苦悶の表情は――どこかで、いつか、見た。
ああ、そうだ。
以前、人狼がやって来た時と、同じ顔だ。
「仁、やめてくれ……彼の名前は出さないでほしい。たとえ通称でも、ちょっとしたことでも、どこで聞かれてるか知れないんだ……だから、頼むよ」
「……」
どこかで聞かれてるか知れない、か。その〝白夜〟はどれだけの地獄耳を誇っているというのだか。
訊ねたところで答えなど期待できないだろう。
いくつかの想像や憶測が、俺の知識を媒体にして脳内に浮沈するが……今は、そっちより優先すべきことがある。
思考遊戯はほどほどにしておこうか。
「まあ、いいだろう」
なんにせよ、アルに気合いが入ればいいんだ。
今の締まりのある顔を保ってくれよ、と心中で祈っておく。
眉間のしわ、吊り上がった眉に、奥歯を噛み締めた苦悶の表情は――どこかで、いつか、見た。
ああ、そうだ。
以前、人狼がやって来た時と、同じ顔だ。
「仁、やめてくれ……彼の名前は出さないでほしい。たとえ通称でも、ちょっとしたことでも、どこで聞かれてるか知れないんだ……だから、頼むよ」
「……」
どこかで聞かれてるか知れない、か。その〝白夜〟はどれだけの地獄耳を誇っているというのだか。
訊ねたところで答えなど期待できないだろう。
いくつかの想像や憶測が、俺の知識を媒体にして脳内に浮沈するが……今は、そっちより優先すべきことがある。
思考遊戯はほどほどにしておこうか。
「まあ、いいだろう」
なんにせよ、アルに気合いが入ればいいんだ。
今の締まりのある顔を保ってくれよ、と心中で祈っておく。