† of Ogre~鬼の心理
「そう面倒くさそうな顔をするなよアル。そういう表情は俺の特権だ、取るな」

と冗談かましてから言った。

「お前があのまんま真輝を抱えて戦闘するのは無理だと思った。だからいったん退かせたんだぞ?」

「うん、そりゃあ、うん、そりゃあね」

アルはいまいち納得したような見えない。

ええいコイツまさか、まだ破れた袖や裾を気にしているのか。

声が勝手に憮然となるのは、仕方ないことだ。

「ちゃんと当初の予定通り、脱走のために手も貸しただろ。それに、探査の結果、本体が南区だと判明したのも偶然だしな。

どのみち考えてもみろ。あのまま俺が『そこから近くのひじり公園にヤツの本体がある』と言ったところでお前、そこから直行できたと」

「ちょちょちょ、待ってよ仁、今、なんて……?」

「は?」

なぜアルはいきなり、暗闇でデコピンを当てられたように泡を食うのか。

あんまりにも手を振り回すせいで、今、袖に糸切れ一本で持っていたボタンがすっ飛んでいったのに、気付いていない。

そこを教えてやっても下手に気にするだけだ。
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