† of Ogre~鬼の心理
ひときわ、礎が発光した。

青白い燐が霧のように広まり、芝生を舐め、視界を横へ広がっていく。

もう、裂き開かれた生け垣の向こうは燐で覆い尽くされていた。

それでも礎は見える。つまりそれだけ、礎の纏う光度は強い。その礎が秘める、『力』も、また。

そこから声が、

《――東城の、鬼め――》

ここまで届く。

私から公園内の礎までの距離は五十、いや、百メートルはたしかだ。にもかかわらず、清楚でありながらどこか婉然たる女声は、私までしかと届く。

調律のおかしいアンプから発せられたような、方向も発音も微妙にブレのある声で。

なぜか。

その理由は――しゃらん。

《いついついつの時であろうと》

あまりにも簡単――しゃらん。

《鬼が平然跋扈する世の中など》

あの、黒いワンピース女が――しゃらん。

《許しがたいこと、この上ありません》

公園の右から左から――しゃらん。

《わたくしの身命は聖音を奏でるために》

まるで万華鏡写しを受けたように――しゃらん。

《わたくしの心音は魍魎を祓うために》

数人、いや十数、いや数十人――しゃらん。

《東城の〝鬼姫〟は、ここで、わたくしが!》

軍勢となって、押し寄せてきた。
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