ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~

あっ……甘さも何て、言ってたような……。
遼さん、いつの間にやら、ちゃっちゃと仕事に戻っちゃってるし。今にも鼻歌を歌っちゃいそうなくらい嬉しそう? 何でか分からないけどね。
でも、まぁいいか。お互いの気持が高めるかどうかなんて分かんないし。
きっと遼さん、冗談半分で言ってるんだよ。

「遊び遊び」

少し汗ばんでいた手に目線を落とし、誰にも聞こえないくらい小さな声で呟いたつもりが、いつの間にか近くに来ていた遼さんには聞こえたみたいで……。

「遊びじゃ済まなくしてあげる」

頭上から浴びせられたその声色に、身体がブルっと震える。顔を上げてみれば、怖いくらい熱を帯びた目で、遼さんが見つめていた。

「ま、またまた、遼さんったら人が悪い。冗談ばっかり言って……。その目、怖いですよぉ~」

なんて、軽く躱すのが精一杯。
それにしてもさっきと言い今と言い、遼さんの言動一つ一つに、何で私はこんなにも心を揺すぶられちゃってるのよっ!!
きっと4年間も男性との接触を避けてきたから、免疫がなくなっちゃってるんだよね。そうだ、そうだっ。
焦っている心の中を覗かれないように遼さんから目線を外すと、ジョッキに残っていたビールを、一気に飲み干した。
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