ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~

この駅は、郊外の大きな公園や大学に行くための乗換え駅にもなっている。平日休日に関わらず、多くの人で賑わう駅だ。
そのせいか、駅員さんやバスの職員さんがあちこちで目に付いた。
結局自分が行きたいバス停が分からず、近くにいた職員さんに聞くと、「7番ですよ」とバス停まで案内してくれた。
笑うと目尻に笑い皺がくっきりと現れ、見るからに人の良さそうな職員さんに、朝からほっこりと心が温かくなった。

時刻表を見ると、バスが来るまでには10分程あった。
バス停の後ろにある待合のベンチに腰を下ろすと、バッグの中から一冊の本を取り出す。
もう何度も読み返している、大好きな恋愛小説。
私が読む恋愛小説の主人公は、得てして自分に強い意志があり、何事にも負けないタイプの女の子が多い。
自分にはないものを、追い求めてしまうからだろうか……。

「なのに私は、一向に強くなれなかったんだよね……」

自照じみた言葉が、口から漏れる。
本をそっと閉じると、目を瞑った。
そうすると脳裏に浮かぶのは、遼さんの笑顔。
もう一週間も会っていない。
先週の土曜日から今日までの間、途中ではしばらく会いたくないなんて思ってしまったけれど、今は会いたくて仕方がない。
気は急いてしまうけれど、その前にどうしても会って話しをしたい人がいた。
そしてその人の話しを聞いて、今の私の気持ちを確固たるものにしたかった。
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