ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~

よく分からない。
自分の気持ちも、彼のすることも……。

まぁ、そんなに深刻に考えることもないか。

『俺たち付き合ってんだろ?』の後には、

『おためしで』が付いてるんだろうし。


ベッドから立ち上がると、眠りから覚めた身体を解す。

「9時にカフェか……。準備しなくちゃね」

遼さんに行くとことを伝えるメールを送信すると、こともあろうかウキウキして
いる自分に気づいてしまう。
4年ぶりに男性と二人っきりのお出かけ。久しぶりのことだから、頭がどうかし
ちゃった?
今日は遼さんの用事に付き合うだけのことであって、決してデートじゃないから
っ!!
無理矢理自分にそう言い聞かせると、そそくさと支度を始めた。


約束のカフェに到着すると、顔なじみの店員さんが席に案内してくれた。いつも
の窓際の席だ。
その席からよく見える落葉樹が、いち早く季節の移り変わりを教えてくれる。
赤く色を染めた葉がひらひらと落ちていく様子を見ていると、「ご注文は?」と
声を掛けられた。いつもと同じカフェ・ラテを頼むと、カバンの中からスマホを
取り出す。
時間を確認すると、画面に8:26と印されていた。

「早く着きすぎ……」

苦笑を漏らし、小声で呟く。



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